ハサミ男を思い出した


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 昨日から読み始めた「リカ」を読む。インターネットと共にそれに疑問を抱かずにすくすく成長してきた私にはあまりなじみのない、「インターネットの恐怖」が書かれている。そうやんなぁ、普通は個人情報を、名前も顔も素性も知れない人間に漏らすことは恐怖よな、と思う。その辺の倫理観が特に欠けている私はそれでは局寸前までいった。現代っ子だからというわけではなく、たんに、そういう人たちが多くいるところで遊んできたからなんだろう。私より年下の恋人はSNSで実際の知り合い以外と会話をしないし、鍵を付けた、友達しかフォローしていない場所でも顔が映った写真はアップしない。
 怖いなと思いながら、ちょっと想像の範囲内で、リアルなのが怖いのだと思っていたけどリカはファンタジーみたいな怖さの女だった。でも、これは最近の現実の女の方が怖いのがわるい。終盤は「ハサミ男」を思い出した。

 仕事を終えた恋人が昼にやってきた。ドライブがてら、サングラスをして、車をオープンにして、高速に乗ってケーキを買いに行った。タルトのお店。とてもおしゃれなお店で、店内は狭いけれど、休日ということもあり四組くらいが並んでいた。二つ買って帰った。恋人の実家に遊びに行く予定があるので、その時の手土産はここのケーキにすることに決めた。

 Huluで「AI崩壊」を途中まで見た。映画館に通っていた時に予告で見ていて、絶対見ると決めていたのに何でか見ていなかったので、Huluで見つけて絶対に見る、と又思ったので見た。一人で見ようかと思っていたけど恋人と見た。内容というか、AIが人類の選別を始めるという主題はとてもおもしろそうでワクワクしていたけど、まだ三分の一ほどしか見ていないけれどちょっと残念かもしれない。病気の妻のために作ったAIを義弟と彼の会社に渡し自分は業界から遠のいていた主人公が表舞台にちらっと顔を出した瞬間にAIが暴走を始めて、しかもその犯人だと疑われて、犯人じゃないっぽい会話を盗聴されているのにそれを聞いても警察の人間は主人公を追いかけていて、みたいな展開。警察側にも隠された何かがあるのかもしれないけどよっぽどのものじゃないとこのもやもやが晴れない。こういう現代社会の問題を取り入れた作品はほぼほぼいやなマスメディアといやな民衆がでてきて、主人公が苦しめられる要因がほぼそれで、なんかいやだ。昔から感じていたことだけど最近になってようやくこれがしんどいって気持ちか、と認識できるようになった。もやもやはあったけどその名前がわからなかった。主要のキャラクター以外、モブといわれる人たちが、脳みそないんじゃないかってくらい脳死しているとなんか萎える。最後まで見ようかと思ったけど、もうすぐで帰らなければいけない恋人が「さみしい」といったのでパソコンを閉じておしゃべりをした。最近の私はわがままでなんか情緒不安定なかんじで自分でも嫌だ。帰る、とか、家族との予定とか、そういった私と過ごす時間以外のことを恋人が発すると悲しい気持ちになって嫌な態度をとって困らせてしまう。先日も彼が帰る予定であった夕方に拗ねて素っ気無い態度をとって、いつも通りの夜中に帰宅する選択をとらせた。夕飯の準備もしてもらっていたし、恋人は母親にすくなからず小言くらいは言われたことだろう。かわいそうだし、嫌な彼女、と思われていそう。それはあんまりうれしくない、というか、かなしいし、ちゃんと大人になりたいとおもうのに、またやった。帰ってほしくないと駄々をこねた。困った顔で、帰ると言われた。拗ねた態度でしばらくいたら悲しそうな顔で拗ねんといて、とあやすように言われた。自分が上手に使えない。あとから、次はちゃんとしようと思うのに、別れの瞬間にはすっかり嫌な自分になってしまう。生理前だからか。生理が来なくて、そういうことかもと不安がっていろいろなことを考えて自分のために私のために泣いていた恋人はやっぱりまだ不安そうで、だからそれをぬぐってあげようと検査したら私にとっては案の定の陰性で線が二本出る気がすると言っていた恋人にとっては悩みが晴れた陰性でうれしそうにしていて私だって今子供を育てられるかといえばしたいかしたくないかではなく可能か不可能かと言えば不可能で、でもそう目に見えてテンションが上がる恋人にちょっとむかっとしてかなしくて、言ったらごめんねうれしいとかではないよと言われた。準備して話し合っての末に出来るのが嬉しくない? というようなことを言われてそれはそうだし正しいけどでも感情なんてものは理屈じゃない。最近すぐ悲しくなる。生理と共に心も不順だ。